eMAXIS新興国株式の第1期決算の保有コスト総額を推計
こんにちは。中田たろうです。
三菱UFJ投信のウエブサイトで、「eMAXISファンド追加アンケート」中間報告(2010年3月31日時点)が掲載されています。
http://maxis.muam.jp/e/topics/pdf/20100407.pdf
予想通りというか、「全世界株式」がアンケートの中間報告で上位でした。
これは以前も書きましたが、仮に「eMAXIS全世界株式インデックス」が信託報酬0.63%(年率)で設定されたとしても、私はあまり嬉しくはないです。
それよりも、eMAXIS先進国株式の信託報酬が年率0.01%でも安くなったほうが、はるかに嬉しいです。
インデックス投資家のニーズは、ファンドの追加よりもそちらほうが高いのではないでしょうか。
さて、3/11に行われた三菱UFJ投信のブロガーミーティングでは、「eMAXIS新興国株式インデックス」の保有コスト(信託報酬とその他費用の合計)は年率1%程度であることが、参加したブロガーから報告されていましたが、私はその数値に疑問を感じています。
「eMAXIS新興国株式インデックス」の第1期決算の期中で、信託報酬やその他コスト等の総額がいくらなのか、推計値を求めようというのが今回のエントリの主旨です。
「2010年3月10日開催ブロガーミーティング【eMAXIS(イーマクシス)運用報告会】の概要」
http://maxis.muam.jp/e/topics/pdf/20100331.pdf
「eMAXIS新興国株式インデックス」第1期運用報告書
http://www.am.mufg.jp/pdf/unyou/250944/20100304.pdf
同社が作成した2つの資料をもとに、計算を行ってみました。
まず、ブロガーミーティングの資料の20ページ目(資料に印字されているページ番号。PDFファイルのページ番号ではない。以下すべて同様)に、09年10月~09年12月の月末ごとの受益権口数が記載されています。
2009/10/30 1,000,000口
2009/11/30 319,085,298口
2009/12/30 699,374,163口
この3か月の口数の単純平均は、
(1,000,000口+319,085,298口+699,374,163口)÷3≒339,819,820口
第1期運用報告書の6ページ目に記載されている「1万口当たりの費用の明細」は、
売買委託手数料 29円
有価証券取引税 6円
保管費用等 51円
上記の数値に、3か月の口数の単純平均を掛け合わせると、それぞれの総額の推計値を求めることができます。
売買委託手数料の総額の推計値=29円×339,819,820÷10,000≒985,478円
有価証券取引税の総額の推計値=6円×339,819,820÷10,000≒203,892円
保管費用等の総額の推計値=51円×339,819,820÷10,000≒1,733,081円
この推計値は、「受益権口数が急増している」という特殊要因は排除されています。
報告書の7ページ目には「売買委託手数料総額」が「984千円」と記載されており、推計値とは1千円強の差しかありませんので、私の計算は概ね正しいことが推測できます。
報告書の20ページ目、損益の状況の表には「信託報酬等」という項目があり、その金額が831,104円と記載されています。
三菱UFJ投信へ電話で確認したところ、これは「信託報酬と監査報酬を足したものである」との回答を得ました。
「監査費用は、1万口当たりの費用の明細では保管費用等に含まれている」ことも確認しました。
仮に「信託報酬:監査報酬=9:1」とすると(この比率は適当で根拠はありません)、
信託報酬の総額の推計値=831,104円×0.9≒797,994円
保有コストについて、すべての推計値が揃いましたので、費用総額の概算値を求めます。
信託報酬の総額の推計値 797,994円
売買委託手数料の総額の推計値 985,478円
有価証券取引税の総額の推計値 203,892円
保管費用等の総額の推計値 1,733,081円
この4つの数字を足すと、eMAXIS新興国株式インデックスの保有コストの総額は、3,720,445円となりました。
この総額は、「信託報酬の総額の推計値」の4.6倍になります。
eMAXIS新興国株式は信託報酬が年率0.63%なので、第1期の期中の保有コストは、年率3%弱になっている可能性があります。
この「年率3%弱」という推計は、「受益権口数が急増した」「簡便法で計算した」という特殊要因は排除されているはずです。
ブロガーミーティングの資料には、信託報酬でマイナス0.1%(17ページ)、取引コスト+保管料でマイナス0.2%(18ページ)が、コスト要因としてファンドのリターンに影響していることが記載されています。
第1期は約3か月間なので、この数字を4倍にして年率に換算しても、それぞれ0.4%と0.8%で、合わせても1%強にしかなりません。
三菱UFJ投信の資料から計算した年率1%強と、私がコスト総額の推計から算出した年率3%弱、この差がどこから生じているのかは不明です。
投信のコスト総額が開示されるか、ブロガーミーティングの資料の「信託報酬でマイナス0.1%」と「取引コスト+保管料でマイナス0.2%」の算出根拠を同社が明示しなければ、正確な判断ができません。
「自分がわからないもの、判断できないものには投資しない」ことは、私が大事にしている投資のポリシーです。
私個人の今後の方針として、当面はSTAM新興国株式を積み立てていくことにします。
eMAXIS新興国株式は、来年の決算後に運用報告書が公開されるまで、もしくはeMAXIS新興国株式の純資産額がSTAM新興国株式より大きくなるまでは、新規購入をストップして様子を見ることにします。
上記の計算によって得られた数値は、中田たろうが独自に推計したものです。
計算方法や考え方が間違っている可能性もありますので、ご留意ください。
また、次期以降はコストの金額は変わる可能性が大きいです。
最後に、投資判断は自己責任で、くれぐれもよろしくお願いします。
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2010/04/08 09:00 | ETF・インデックスファンド | COMMENT(12) | TRACKBACK(0) TOP
コメント
初めまして。
このエントリを拝見いたしまして、乖離理由を当方でも考えてみたのですが、中田たろうさんも簡便法と同じ口数で計算されているので、1/1から1/26間の口数増加が計算に入っていないからではないでしょうか?
ブロガーミーティングの資料では、1/26時点での口数が1,407,543,857口となっていますので、これを口数平均に加えて計算されてはいかがでしょうか?
No:348 2010/04/09 18:53 | LEOPARD #SFo5/nok URL [ 編集 ]
> LEOPARD様
コメントありがとうございます。
「1万口当たりの費用」は
(コストの総額)÷(簡便法の口数)
で計算されているはずですので、簡便法ではない口数を掛け合わせると、その結果は間違った数値になると思います。
No:350 2010/04/09 21:06 | 中田たろう #- URL [ 編集 ]
中田たろうさんの方法がまさに簡便法そのものだと思いますが。
1/1から1/26に増加した口数の費用も運用報告の費用に計上されているにも関わらず、1万口あたりの費用を算出するために用いる口数が12月末までの平均口数になるため、1月に増加した口数が反映されず、実際よりも多くの費用がかかっているように見える、というのが三菱UFJ投信の答えだったように思います。(これが口数の急増と簡便法による特殊要因では?)
つまり、このエントリでは、、【「受益権口数が急増した」「簡便法で計算した」という特殊要因】の影響をもろに受けていると言うことです。
No:351 2010/04/10 01:12 | LEOPARD #SFo5/nok URL [ 編集 ]
> LEOPARD様
> 1万口あたりの費用を算出するために用いる口数が12月末までの平均口数になる
だから「コスト総額」を計算するには、「1万口あたりの費用」と「12月末までの平均口数」を用いる必要があるのではないでしょうか?
(1万口当たりの費用)=(コスト総額)÷(簡便法の口数)
という計算式から、
(コスト総額)=(1万口当たりの費用)×(簡便法の口数)
という計算式が導かれるはずです。
(コスト総額)=(1万口当たりの費用)×(簡便法ではない口数)
は誤りだと思います。
No:352 2010/04/10 01:57 | 中田たろう #- URL [ 編集 ]
実際の10000口当たりの全費用を算出しますと、
設定日から1月26日までの平均口数が
606,500,830口・・・・・・(1)
総費用は中田たろうさんのものを使用。
1,733,081円・・・・・・・・(2)
(2)/(1)×10000=29円・・・・・・・(3)
設定時および月末、1月26日の価額より平均価額を算出 9771円・・・・・・(4)
(3)/(4)×100=0.29%
資料の数字とほぼ一致しますね。
年率は0.29×4=1.17%
問題点は、
費用は10月28日から1月26日までの91日分が計上されているのに、それを除する口数が
10月28日から12月31日までの65日分の平均口数になっているからです。
本来は1月26日の口数を含めて計算するべきですが、それが簡便法の為に出来ない=簡便法の特殊要因
1月1日から1月26日の間も口数が大きく増加している=受益口数が急増した特殊要因
>だから「コスト総額」を計算するには、「1万口あたりの費用」と「12月末までの平均口数」を用いる必要があるのではないでしょうか?
分かっているのはまず、コスト総額であり、それを口数で割るから、1口あたり、ひいては1万口あたりのコストが算出できるのです。取引先からの請求書にわざわざ最初から1万口当たりの請求額が書いてあることは無いし、そもそもそんなことは不可能です。信託報酬にしても純資産額×信託報酬率ですからどこにも口数はでてきません。
つまり、期末時点で平均口数、平均価額、総費用を算出してそこから計算しているものと思います。中田さんの計算順序が反対だったと言う事です。
要は、コスト総額の算出期間と平均口数の算出口数が違うために(簡便法の為に)生じる誤差みたいなものです。
もし、12月末までの平均口数を用いるなら費用も同じように12月末時点での費用を計上するべきなのです。
No:353 2010/04/10 03:29 | LEOPARD #SFo5/nok URL [ 編集 ]
> LEOPARD様
最初と2回目のコメントでのご指摘は、
>中田たろうさんも簡便法と同じ口数で計算されている
>このエントリでは、、【「受益権口数が急増した」「簡便法で計算した」という特殊要因】の影響をもろに受けている
というものでしたが、
>総費用は中田たろうさんのものを使用
3回目のコメントでは、私の推計値を参照されていらっしゃいますよね。
確認したいのですが、「簡便法と同じ口数で計算」した「保有コスト総額」の私の推計は、間違っていないということでよろしいでしょうか?
No:354 2010/04/10 08:00 | 中田たろう #- URL [ 編集 ]
>中田たろう さん
>確認したいのですが、「簡便法と同じ口数で計算」した「保有コスト総額」の私の推計は、間違っていないということでよろしいでしょうか?
はい、そうです。運用報告はいわば、9÷3=3と言うような計算をしており、中田たろうさんは、それを3×3=9と言う計算を行い、もともとの費用を割り出しているのです。
私の指摘を具体的に申しあげますと、
一口一日あたり10円のコストがかかるファンドがあると仮定します。(基準価額は変動無しとします。)毎日一口ずつ増えるとします。
口数 コスト
1日目 1口 10円
2日目 2口 20円
3日目 3口 30円
4日目 4口 40円
5日目 5口 50円
6日目 6口 60円
7日目 7口 70円
8日目 8口 80円
9日目 9口 90円
合計 45口 450円
平均 5口 90円
1日目 4日目 7日目の数値を使用(簡便法)
合計 12口
平均 4口 112.5円
1日目 4日目 7日目 9日目の数値を使用
合計 21口
平均 5.25口 85.71円
この場合、簡便法は8~9日目の口数増加分が計上されていないにも関わらず、費用は計上されているので誤差が大きくなっています。この現象が「受益権口数が急増した」「簡便法で計算した」という特殊要因です。
No:355 2010/04/11 00:01 | LEOPARD #SFo5/nok URL [ 編集 ]
> LEOPARD様
「1万口あたりの費用の正確な数値」を求めるならば、ご指摘のような計算をする必要があることは理解しています。
>中田たろうさんの方法がまさに簡便法そのものだと思います
>このエントリでは、【「受益権口数が急増した」「簡便法で計算した」という特殊要因】の影響をもろに受けている
これらの指摘が何を指しているのか、私には理解できていません。
本文のどの部分についての指摘なのか、「この計算、この数値は簡便法の影響がある」と具体的に教えていただけませんでしょうか。
No:356 2010/04/11 10:28 | 中田たろう #- URL [ 編集 ]
>中田たろうさん
>本文のどの部分についての指摘なのか
「2009/10/30 1,000,000口
2009/11/30 319,085,298口
2009/12/30 699,374,163口」
の部分です。この月末時の平均口数という考え方が簡便法なのです。そして、eMAXIS新興国株式インデックスの第1期末は1月26日ですから月末ではありません。しかもその間で口数が急増しているのです。そのため計算の分母にあたる平均口数が実際の平均口数より過小になっているのです。そういう事が重なった結果、誤差が大きくなっていると言うことです。
もし、期間の口数が一定なら誤差は出ないことになります。
No:357 2010/04/11 22:23 | LEOPARD #SFo5/nok URL [ 編集 ]
> LEOPARD様
1.簡便法について
本文を引用しますが、
> 売買委託手数料の総額の推計値=29円×339,819,820÷10,000≒985,478円
> 有価証券取引税の総額の推計値=6円×339,819,820÷10,000≒203,892円
> 保管費用等の総額の推計値=51円×339,819,820÷10,000≒1,733,081円
「簡便法の口数」は、この計算で使っているだけですよ。
この推計値が間違っていないことは、コメントで確認させていただいております。
何か勘違いをされていらっしゃいませんでしょうか。
2.保有コストの推計について
3回目のコメントでは、私の推計した保有コスト総額を基に計算をされていますが、
>年率は0.29×4=1.17%
この計算結果は誤りです。
eMAXIS新興国株式の信託報酬は年率0.63%ですので、上記の数値が正しいと仮定すると
信託報酬 年率0.63%
その他コスト 年率0.54%
となります。
一方、私が推計した保有コストの総額は
信託報酬 797,994円
その他コスト 2,922,451円
です。
両者を比較すると、「信託報酬」と「その他コスト」の比率が大きく異なっています。
総額を基に年率を計算しているので、「信託報酬」と「その他コスト」の比率は同じであるべきです。
この年率の保有コストの計算結果こそ、「簡便法」による「特殊要因」が影響しています。
>606,500,830口・・・・・・(1)
この数値は1月26日の受益権口数を反映していますが、実際の平均口数よりも過大になっているので、年率の保有コストが過小になっています。
より正確に計算するならば、簡便法は使わないで、設定日の10月28日から決算日の1月26日まで、すべての営業日の受益権口数の単純平均を算出する必要があるでしょう。
なお、細かい点ですがもう一つ指摘すると、(1)は計算間違いの数値です。
10月末、11月末、12月末、1月26日の受益権口数の単純平均は、606,750,830口になります。
くどいかもしれませんが、念のために指摘しておくと、
>1日目 4日目 7日目の数値を使用(簡便法)
>合計 12口
>平均 4口 112.5円
上記は明らかに「簡便法」ですが、
>1日目 4日目 7日目 9日目の数値を使用
>合計 21口
>平均 5.25口 85.71円
こっちも「簡便法」になります。
「簡便法」ではないのは、
>合計 45口 450円
>平均 5口 90円
この例のはずです。
以上、長文になりましたが、私の意見をご理解いただければ幸いです。
No:358 2010/04/12 00:23 | 中田たろう #- URL [ 編集 ]
すいません、理解できました。
「保管費用等の総額」を全ての費用合計と勘違いしておりました。お騒がせして申し訳ございませんでした。
確かに3%弱になりますね・・・・。謎ですね。
No:360 2010/04/12 21:32 | LEOPARD #SFo5/nok URL [ 編集 ]
> LEOPARD様
私も勘違いでエントリを書いて、読者に迷惑かけたこともあるので、こういうことはお互い様だと思っています。
今後もよろしくお願いします。
しかし計算結果が「3%弱」になるのは「謎」なんですよね…。
No:363 2010/04/13 23:07 | 中田たろう #- URL [ 編集 ]
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