新興国ファンドの保有コストを詳細比較
こんにちは。中田たろうです。
先週、三菱UFJ証券のeMAXISシリーズの運用報告書が公開されて、eMAXIS新興国株式の「その他コスト」が非常に割高なことが明らかになりました。
ファンドの設定から3か月での決算なので運用経費が嵩みやすい、という点は割り引く必要はあるかもしれません。
次期の決算でどこまで改善が可能なのかということが、投資家としては最も知りたいポイントでしょう。
一般販売されている新興国株式インデックスファンドには、三菱UFJ投信のeMAXIS以外に、住信AMの「STAM新興国株式インデックス・オープン」、日興AMの「年金積立インデックスファンド海外新興国(エマージング)株式」があります。
eMAXIS新興国株式とこれら2つのファンドの過去の運用報告書から、保有コストに関する数値を引用して、比較をしてみました。
(表)新興国株式ファンドの保有コスト
計算期間 | 信託報酬 | その他コスト | 合計 | 信託報酬 (年率) | 実質的な 保有コスト (年率) | |||
売買委託 手数料 | 有価証券 取引税等 | 保管 費用等 | ||||||
eMAXIS 新興国 株式 | 【第1期】 09年10月28日~ 10年1月26日 | 15円 | 29円 | 6円 | 51円 | 101円 | 0.63% | 4.242% |
STAM 新興国 株式 | 【第1期】 08年12月15日~ 09年11月10日 | 104円 | 33円 | 5円 | 37円 | 179円 | 0.8715% | 1.5000% |
年金積立 新興国 株式 | 【第1期】 08年4月1日~ 08年11月16日 | 52円 | 8円 | 1円 | 19円 | 80円 | 0.8925% | 1.3731% |
【第2期】 08年11月17日~ 09年11月16日 | 56円 | 5円 | 1円 | 20円 | 82円 | 1.3069% | ||
(2010年2月17日以降は信託報酬が 年率0.063%ポイント引き下げられた) | 0.8295% | (1.2439%) |
「年金積立」の第1期決算の運用報告書は、ウエブで確認することはできませんが、私のブログで数値のメモを残してあったので、そこから引用しました。
「年金積立」は設定が最も古く、既に2回の決算を終えています。
そのマザーファンドは、ゆうちょ銀行が販売している「日興五大陸株式ファンド」にも組み込まれています。
「日興五大陸株式ファンド」は2006年6月設定で、新興国株式のマザーファンドは同年5月に設定されています。
つまり「年金積立」は、マザーファンドが一定規模に育ち、ファンド設定直後の「その他コストが割高な期間」が既に終わったところから運用を開始したという、恵まれた条件があったことになります。
それに対して、「STAM」と「eMAXIS」は、ファンドの立ち上げと同時期に新興国株式のマザーファンドを設定しているので、「年金積立」とは条件が同一ではないことへの留意が必要でしょう。
そういう前提があるとはいえ、3ファンドの中では「年金積立」の「その他コスト」は最も低く抑えられていて、評価できると思います。
しかも「年金積立」は、今年2月には信託報酬を年率0.063%ポイント引き下げる「快挙」を実施しました。
第3期の「その他コスト」が第2期と同じ比率だと仮定すると、現在の実質的な保有コストは年率1.2439%になります。
(この数値でも、やや割高な感じはしますが…)
残念なのは、「年金積立」はSBI、マネックス、楽天などの主要ネット証券では、販売手数料が1.05%必要になることです。
唯一、投信スーパーセンターではノーロードで取り扱っているので、他社も「横並び」になることを期待したいです。
「STAM」と「eMAXIS」は、次期以降の決算で「その他費用」をどれだけ削減できるかが注目です。
とくに「eMAXIS」の保管費用等は、突出した高い数値になっています。
マザーファンドの純資産額が小さいときはその他費用が割高になりやすい傾向があるとして、一定規模までファンドが育った状況で「年金積立」のコストよりも抑えることができるかどうか、次期の決算を待ちたいです。
なお、参考までに、運用報告書からマザーファンドの資産額を抜粋してみました。
【マザーファンドの資産額】
・eMAXIS 1,378百万円(2010年1月26日現在)
・STAM 4,767百万円(2009年11月10日現在)
・年金積立 5,221百万円(2009年5月18日現在)
「eMAXIS」は信託報酬が最も低いものの、3つの中ではマザーファンドの規模が小さいので、現状では相対的に不利かもしれません。
ファンドが今後も順調に資金を集めることができるかどうかが、カギになるでしょう。
「STAM」は3ファンドの中では最も販売会社数が多いので、より多くの投資家の資金を集めやすい環境にあると言えるでしょう。
「年金積立」のマザーファンドは、前述の通り、ゆうちょ銀行が販売している「日興五大陸株式ファンド」にも組み込まれているので、資産額が安定しているのがメリットになるかもしれません。
それぞれのファンドにメリットはあるので、購入済みのものをあわてて買い換える必要はないでしょう。
今週は三菱UFJ投信主催で、ブロガーミーティングが行われるそうです。
私は参加しませんが、eMAXIS新興国株式のコストについて、詳しい説明や今後の見通しなどの新情報が同社から発信されるかどうか、参加されたブロガーさんの報告を待ちたいと思います。
今回はeMAXISの運用担当者もミーティングに参加するようなので、突っ込んだ議論、質疑が行われることを期待したいです。
新興国株式への投資でどの商品を選択するかは、その内容を見てから判断すればいいと思います。
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2010/03/09 09:00 | ETF・インデックスファンド | COMMENT(2) | TRACKBACK(1) TOP
コメント
こんばんは。
現段階では年金積立がもっとも保有コストで有利な状況なのですね。
STAMもeMAXISもまだまだ第1期の結果しか分からない状況ですので、次期決算が楽しみです。
No:322 2010/03/10 23:23 | SJP #- URL [ 編集 ]
> SJP様
コメントありがとうございます。
いくつかのブログでブロガーミーティングの内容が報告されているのでご存知だと思いますが、eMAXISの「その他コスト」は、懸念しているような水準ではなさそうですね。
次期決算では、そのあたりのことが明確になるのではないかと思います。
No:325 2010/03/12 20:18 | 中田たろう #- URL [ 編集 ]
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