ETFの「その他費用」について
こんにちは。中田たろうです。
昨日ついに、ブログの訪問者数の累計が10万人の大台を突破しました。
読者のみなさま、ありがとうございます。
ブログの開設が2007年6月ですので、2年7か月かかったことになります。
始めてから間もないころは、毎月数百人程度の訪問者でしたが、この数か月はありがたいことに毎月5千人以上のアクセスを記録しています。
「読者数をあまり増やしたくない」というのも、実はホンネとしてあるのですが、投資のリターンと同じで自分でコントロールできるものではないので、あまり気にしないで成り行きまかせでいいかなと思っています。
さて、先週のエントリで少し触れた、ETFの「その他費用」について、詳しくまとめてみました。
野村AMと日興AMの両社へ電話して、下記のことを確認しました。
・ETFの財務諸表に記載された「営業費用合計」は、信託報酬とその他費用の合計
・「委託者報酬」と「受託者報酬」の合計が「信託報酬」にあたる
とのことです。
TOPIXに連動するETFは、大和、野村、日興、三菱UFJの4社が運用する4銘柄があります。
それぞれの銘柄ごとに、信託報酬とその他費用の合計でどのくらいコストが引かれていて、実質的な運用コストがどのくらいか、調査してみました。
(表)TOPIX連動型ETFの運用コスト
大和 | 野村 | 日興 | 三菱UFJ | |
コード | 1305 | 1306 | 1308 | 1348 |
信託報酬 (年率) [A] | 0.1155% | 0.1155% | 0.0924% | 0.0819% |
営業費用合計 [B] | 5億7641万円 | 12億3220万円 | 5億2397万円 | 初回の決算前 のため不明 |
委託者報酬 + 受託者報酬 [C] | 4億4201万円 | 9億4648万円 | 3億3088万円 | |
実質的な 運用コスト (年率) [A]×[B]÷[C] | 0.1506% | 0.1503% | 0.1463% |
金額では野村の1306の「営業費用合計」が大きな額になっていますが、ETFの資産額が大きければ費用合計も増えるので、ここでは「年率」の数値に注目してください。
信託報酬は日興が安いものの、その他費用はやや割高で、トータルのコストでは大和や野村と大きな差はないことがわかります。
三菱UFJのETF(1348)は、毎年1/16と7/16の年2回決算で、来週の1/18が初回の決算日になります。
おそらく、3月ころには財務状況が公表されるのではないかと思います。
ETFを売買する場合、基準価額と取引所価格のかい離が生じる問題もあります。
これらの4銘柄の中で最も取り引きが活発なのは野村の1306なので、仮に三菱UFJの実質的な運用コストが最も低いとしても、投資するのは1306がベターではないかと、個人的には考えています。
この「その他コスト」は、日興AMが新しく上場させるMSCIコクサイ、およびMSCIエマージング連動のETFにも生じるはずです。
TOPIX連動型で年率0.04パーセントポイント前後もコストを上昇させていますが、外国株式ETFのその他コストがどうなるか、来年1月の決算後に、財務状況をチェックしたいところです。
ところで海外ETFの場合は、運用コストのことは「expense ratio」と表記されています。
バンガード・ジャパンのウエブサイトでは、日本語で「総経費率」と併記していますので、「expense ratio」は、「信託報酬」と「その他費用」を合算したものになるのではないかと推測しています。
(詳しい方がいらっしゃれば、コメントで教えていただければ幸いです)
もしもそうであれば、国内上場のETFと海外ETFのコストを比較するときは、信託報酬、取引手数料、為替手数料など、事前に明らかなコストだけでなく、国内ETFの「その他費用」も考慮して比較する必要があると言えるでしょう。
なお米国株式ETFのVTIは「expense ratio」が年率0.09%ですので、コストの低さは驚異的と言えるでしょう。
ちなみに国内ETFの財務諸表は、大和と野村、三菱UFJのETFの場合、交付目論見書に記載があり、ウエブサイトで閲覧できます。
日興のETFの場合は、ETFの各銘柄ごとの「決算短信」のページで閲覧可能です。
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2010/01/15 09:00 | ETF・インデックスファンド | COMMENT(13) | TRACKBACK(2) TOP
コメント
分配金(【税引前】)再投資後の基準価額を比較すると、
【5年リターン】
大和▲15.09%
日興▲14.99%
野村▲15.10%
【3年リターン】
大和▲43.28%
日興▲43.27%
野村▲43.22%
となっていますね。
投資信託の場合もそうですが、同じTOPIX連動ファンドでも分配金の多寡によって、実質(税引後)のリターンが大きく変わってきます。
ETFと無分配投資信託を税引後リターンで比較するべきだと思いますが、そのような比較はあまり見たことがないです(税率は一定ではありませんが、現在であれば10%で計算すればいいかと思います)。
ニッセイの
・「ニッセイ日経225インデックスファンド(信託報酬0.25%)」
・「ニッセイTOPIXオープン(信託報酬0.50%)」
などは無分配なので、配当金課税を考慮すると上記ETFより「ニッセイTOPIXオープン【3年リターン】▲43.89%(無分配のため実質リターン)」の方がベターな選択肢ではないかとも思えてきます。
ETFは貸株で金利を得ることができますが・・・。
No:229 2010/01/15 20:43 | かっつ #- URL [ 編集 ]
> かっつ様
ETFのリターンに関して3銘柄の差は「ほぼ誤差の範囲」と言えるようですね。
貴重なデータをありがとうございます。
無分配のインデックス投信とETFの比較についてですが、ETFの価格は分配落ちするので、将来の売却時に支払う税金はETFの方が少なくなります。
その点も考慮すれば、「保有コストが低いETFがやや有利ではないか」と私は思っていますが、どうでしょうか。
それから、2009年分から株式や投信の譲渡損失と分配金の損益通算が可能になっています。
これをうまく使えば、ETFの分配金への課税によるリターンの低下は、最小限にすることができます。
ただし、ETFは取引手数料が売買の2回分必要なので、短期で売買する場合や投資額が小さい場合は、インデックス投信が有利になるケースも考えられるでしょう。
No:232 2010/01/15 21:27 | 中田たろう #- URL [ 編集 ]
>ETFの価格は分配落ちするので、将来の売却時に支払う税金はETFの方が少なくなります。
分配落ちにより、売却益の額が無分配に対して少なくなるので、たしかに譲渡益に対する税金は少なくなりますね。
しかしながら、譲渡益が少ないということは売却時のキャッシュ・インフローも少なくなります。少なくなる分はそれ以前に分配金という形でキャッシュ・インフローがあるわけです。ただし、分配金からは税金が引かれます。
分配金から税金が引かれなければ、無分配のケースとリターンは同じになるはずです(分配金再投資の場合)。
分配金再投資を前提とすると、複利効果により無分配の方がリターンが良くなると思われます。
信託報酬を含め、税コスト等を総合的に勘案して検証してみる価値がありそうですね。
No:233 2010/01/15 23:14 | かっつ #- URL [ 編集 ]
Expense ratio
expense ratioですが、米国の投信・ETFでは運用報酬・管理経費・報告書・目論見書経費など運用経費全般ということになっています。なので、中田たろうさんの指摘されているとおり、信託報酬+その他の費用という理解でよいと思います。
信託報酬しか示さない日本の投信は、ある意味客をだましているようなものですね。事後でもよいから総経費率を公表するべきだと思います。日本の投資家一般のコスト意識が低いせいでこれまで問題にならなかったのかもしれませんが。
ちなみに、公表されてるexpense ratioは目論見書に記載されている、見積額にすぎません。通常は想定通りの経費になるのですが、VSSのようにやってみたら高くなっちゃった、ということもあります。(prospectusでは0.38%でしたが2009/10/31の時点で0.52%です。vanguard.comのVEUのannual reportになぜか載ってます)
No:234 2010/01/16 07:28 | 鶏の香草焼き #eMkLRZRc URL [ 編集 ]
①TOPIX連動型上場投資信託(1306)
②ニッセイTOPIXオープン
について2009年12月末時点の【1年リターン】を比較してみます。
各社の月次レポートによると【1年リターン】は、
①TOPIX連動型上場投資信託(1306) +7.37%
②ニッセイTOPIXオープン +7.14%
となっております。
まず、①TOPIX連動型上場投資信託(1306)についてですが、+7.37%という値については分配金を非課税で再投資したものとして計算されています。
①TOPIX連動型上場投資信託(1306)
日付:基準価額(100口):終値(100口)
2008/12/30:87,683円:88,300円
2009/7/10:87,994円:87,900円
2009/8/18:95,768円:95,800円
2009/12/30:92,176円:92,100円
分配金:分配金(税引後):分配日:入金日
1,880円:1,692円:2009/7/10:2009/8/18
2009/7/10に分配金(税引前)を再投資(終値ベース)した場合、
92,176×(1+(1,880÷87,900))÷87,683-1=+7.37%となります。
税引後で計算すると、【1年リターン】は、
92,176×(1+(1,692÷87,900))÷87,683-1=+7.15%となり、
分配金課税によるTAXコストが0.22%発生します。
しかしながら、分配金の入金日は2009/8/18であり、かつ課税されているので、調整を加えると、
92,176×(1+(1,692÷95,800))÷87,683-1=+6.98%となります。
また、ETFは市場価格で取引されるため、実質の【1年リターン】は、
92,100×(1+(1,692÷95,800))÷88,300-1=+6.15%となります。
②ニッセイTOPIXオープンは、分配がなかったため、実質の【1年リターン】は、月次レポートに記載の通り+7.14%となります。
日付:基準価額
2008/12/30:6,807円
2009/12/10:7,293円
7,293÷6,807-1=+7.14%
したがって分配金(税引後)再投資後の【実質1年リターン】は、
①TOPIX連動型上場投資信託(1306) +6.15%
②ニッセイTOPIXオープン +7.14%
となります。
これに加えて、売買手数料が発生しますので、信託報酬を比較するだけでなく、様々なコストを勘案する必要がありそうですね。
No:237 2010/01/16 10:44 | かっつ #- URL [ 編集 ]
Re: Expense ratio
> 鶏の香草焼き様
貴重なコメントありがとうございます。
「事後でもよいから総経費率を公表するべきだ」というご意見は、その通りですね。
現状では運用報告書などから総経費率を算出するしか手建てがありませんので、よほど熱心な人しか「真実」は知らないことになってしまいます。
また米国ETFの場合、バンガードだけでなくiシェアーズなどのETFでも、expense ratioが変動する場合があることは、以前から認識していました。
公表されている数値は「直近の実績値」だろうと想像していたのですが、「見積額」が正解なのですね。
勉強になります。
さきほど、米国バンガードのウエブサイトを確認してみたところ、VSSのexpense ratioが2009/12/30時点の数値に更新されていて、0.55%になっていました。
https://personal.vanguard.com/us/funds/snapshot?FundId=3184&FundIntExt=INT
No:238 2010/01/16 21:26 | 中田たろう #- URL [ 編集 ]
> かっつ様
前回のコメントで指摘した通り、売却時の税金も考慮する必要があります。
最終的な税引き後のリターンは、両者の差は縮小しますね。
ETFの分配金は、再投資するまでにタイムラグがあることも大事なポイントですね。
ただし、「タイムラグがあるから不利」になるとは限らないでしょう。
たとえば2008年の場合、9月のリーマンショック後に分配金を再投資していれば、「かなりおいしい価格」で購入できたはずです。
ETFで分配金を再投資をするときに株価が上がっているか下がっているか、事前には分かりませんので、「分配金を受け取ったら速やかに再投資をして、時間損失を小さくする」ことが大切だろうと思います。
それから、私は2009年分の確定申告で、譲渡損失と分配金の損益通算を行う予定です。
1306の分配金から源泉徴収された10%の税金は、全額が還付されますので、かっつ様の試算よりもリターンは上がることになるでしょう。
No:239 2010/01/16 22:05 | 中田たろう #- URL [ 編集 ]
古い記事にコメントすいません。
ETFの隠れコストを調べていて、こちらのブログにたどり着きました。
財務諸表からの計算方法とても参考になりました。ありがとうございます^^
また、面白い情報がアップされるのを楽しみにしています。
No:260 2010/01/26 19:51 | MURAMASA #- URL [ 編集 ]
> MURAMASA様
コメントありがとうございます。
お役に立ちましたら幸いです。
ブログでお子様の写真を拝見しました。
表情も仕草も、かわいいですね。
No:262 2010/01/26 21:01 | 中田たろう #- URL [ 編集 ]
たびたびすいません。
記事の内容と関係無いので、不適切と判断したら削除して下さい。
すいません、上記コメントのURL間違えていました(汗)投資ブログのURLはこのコメントのURLです。
写真の方は、趣味で別にやっているブログです。
お恥ずかしい限りです。
No:264 2010/01/27 22:11 | MURAMASA #- URL [ 編集 ]
古い記事への投稿で申し訳ありません。
いつも拝見しております。ためになる情報をありがとうございます。難しくて分からないことも多い
ですが勉強させて頂いています。
ところで、運用コストの算式を
信託報酬率×営業費用合計÷報酬
とされていますが(営業費用合計÷純資産合計と同じ?)、例えば野村の場合ですと、
http://ita.daiwa-fc.co.jp/ITAS/INDR/01312017.htmlにある、「費用の内訳」における費用合計と
基準価額より、
運用コスト=費用合計/基準価額=236/130159=0.18%
とするのは誤りでしょうか?
的外れなことをお伺いしているかもしれませんが、宜しくお願いします。
No:306 2010/02/14 10:47 | shiro #- URL [ 編集 ]
> shiro様
コメントありがとうございます。
> 運用コスト=費用合計/基準価額=236/130159=0.18%
> とするのは誤りでしょうか?
運用コストは計算期間の毎営業日ごとに日割り計算をして累積した数字です。
基準価額が高いときは日割りのコストも高くなり、基準価額が低いときはコストも低くなります。
基準価額は期間内で日々変動していますので、上記はやや不正確な計算になると思います。
No:308 2010/02/14 14:28 | 中田たろう #- URL [ 編集 ]
管理人様
レベルの低い質問にも関わらず、早速ご回答いただきありがとうございます。
私が質問させていただいた式ならば、期間内の基準価額平均値を用いればそれなりに意味があるということになるのかなと思いました。
No:309 2010/02/14 18:26 | shiro #- URL [ 編集 ]
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